フーナーテストの概要と目的フーナーテストは、不妊症の原因を特定するために行われる検査で、精子と子宮頸管粘液の適合性を評価するものです。排卵期に実施されるこの検査では、性交後に子宮頸管粘液を採取し、その環境内で運動性のある精子がどのくらい残っているかを観察します。この検査は、自然妊娠の可能性を判断し、不妊の原因が精子、頸管粘液、あるいはその他の要因に起因するかを分析するのに役立ちます。検査の手順とタイミングフーナーテストを実施する時期は、精子にとって頸管粘液が最適な状態になる排卵期です。事前に医師から排卵期を予測してもらい、排卵日数日前から排卵日頃で性交渉を行います。性交後約12時間以内に医療機関にて粘液を採取し、精子の運動性や適合性を評価します。採取された粘液を顕微鏡で観察し、その中を泳いでいる精子の状態を確認します。検査は数分で終了し、結果は当日にわかることが多いです。1回目の検査で良い結果が得られない場合は、次周期以降で再検査を行います。フーナーテストでわかる不妊の原因フーナーテストでは、精子と子宮頸管粘液の適合性や、精子の運動性、粘液の質などを評価します。このテストにより、不妊原因として以下のような問題が特定されることがあります。運動精子の数が少ない子宮頸管粘液の状態が良くない抗精子抗体がある運動精子の数が少ない運動精子の数が少ないと、卵子に到達する可能性が低くなり、それに伴い自然妊娠の確率も下がってしまいます。フーナーテストの一般的な判定基準は以下のとおりです。運動精子の数判定結果15匹以上妊娠する可能性が高い5~14匹妊娠は期待できる4匹以下妊娠する可能性が低い0匹無精子症や抗精子抗体が疑われる子宮頸管粘液の状態が良くない頸管粘液が過度に粘稠だったり、酸性が強すぎたりすると、精子が子宮頸管を通過できず、卵子が待つ卵管に到達しにくくなることがあります。このように子宮頸管粘液が良好でない状態では、検査結果が「不良」と判定されることがあるのです。抗精子抗体がある女性が抗精子抗体を持っていると、粘液中の抗体が精子の侵入を妨げ、卵子に到達できなくなる可能性が高まります。一方、男性が抗精子抗体を持っている場合、精子の運動能力が低下したり、女性の体内に入った際に精子が死んでしまうことがあります。フーナーテストをくり返し行っても結果が良くない場合は、男女ともに抗精子抗体の有無を検査すると良いでしょう。検査前後の注意点検査前の準備フーナーテストの正確性を高めるために、検査の2~4日前から性交渉やマスターベーションを控えるよう指導される場合があります。また、女性は粘液の質に影響を与えないように、膣洗浄やローションの使用は控えることが大切です。検査後の対応フーナーテストの結果に基づいて、治療プランが検討されます。検査結果が良好であれば、タイミング法などの自然妊娠を目指す方法が考えられます。一方、結果が不良であった場合は、人工授精や体外受精といった治療法が提案されることがあります。検査の限界と注意点フーナーテストは、不妊原因を特定するための基本的な手段ですが、精度には限界があります。夫婦とも問題がないのに、検査タイミングや体調の変化が結果に影響を与えることがあるため、この検査だけで不妊原因を完全に解明することは難しいのです。また、検査結果が不良と判定されたその月に自然妊娠したケースもあるので、テスト結果を過度に悲観する必要はありません。フーナーテスト単独の結果に依存せず、他の検査結果や医師の判断を総合的に考慮することが大切です。フーナーテスト後のステップ検査結果に基づき、次のようなステップが取られます。追加検査の実施精液検査や子宮卵管造影検査などを追加で行い、不妊の原因をより詳しく特定します。治療方法の選択精子と頸管粘液の適合性が低い場合は、人工授精や体外受精が選択されます。男性が保有する抗精子抗体による受精障害では、顕微授精が必要となる場合があります。生活習慣の改善たばこや過度なアルコール接種を控える、生殖ホルモン分泌に重要な役割を果たすビタミンDを摂取することなどが大切です。まとめフーナーテストは、不妊治療を進める上で基本的な検査であり、その結果は治療方針の決定に役立ちます。ただし、体調の変化などが検査結果に影響を与える場合があるので、他の検査や医師のアドバイスと併せて総合的に判断することが大切です。フーナーテストを参考に最適な治療方法を見つけ、不妊治療を前向きに進めていきましょう。参考文献:不妊の原因と検査,公益社団法人日本産婦人科医会 生殖医療Q&A,一般社団法人日本生殖医学会