不妊治療などの高額な医療費支出が控え、家計が心配ではありませんか?「高額療養費制度」という医療費補助のしくみを使えば、医療費負担を減らすことができます。しかし、高額療養費制度は申請から支給まで3か月程度かかり、突然の医療費出費には対応しきれません。そんな時に便利なのが「高額医療費貸付制度」です。この記事では、高額医療費貸付制度について詳しく解説します。いざというときに制度を正しく活用できるように、制度を知って備えましょう。高額医療費貸付制度とは医療費を無利子で借りられる制度高額医療費貸付制度とは、高額療養費の申請が通り金額が支給されるまでの期間、無利子で医療費を貸してもらうことのできる制度です。貸りられる金額は加入している健康保険によりますが、高額療養費支払見込額の8~10割となっています。高額療養費制度の支給上限額は保険適用となった医療費の自己負担分から算出されます。自己負担分は6歳以上69歳以下の場合医療費の3割なので、そこから計算される上限額を超えた金額が高額療養費支払見込額です。高額医療費貸付制度を利用できる条件高額医療費貸付制度を利用できる条件は健康保険に加入していることです。健康保険とは国民健康保険や会社の健康保険など、保険証に記載されている保険者が提供する公的保険で、国民の全員が加入するものです。ただし、医療機関の承認が得られない場合や健康保険料を滞納している場合は利用が制限されます。加入している健康保険によってはさらに条件がある場合もあるので、確認が必要です。高額医療費貸付制度で借りられる額の算出方法高額医療費貸付制度で借りられる額のおおよそは、高額療養費制度で支給される額を計算することで調べられます。高額療養費制度で支給されるのは、所得ごとの上限額を超えた分の金額です。所得額がわかれば、高額療養費制度の上限額を計算することができます。69歳以下の上限額算出方法を表で示します。所得水準年収の目安上限額の計算式標準報酬月額83万円以上約1160万円~252,600円+(医療費-842,000)×0.01標準報酬月額53万~79万円約770~1,160万円167,000円+(医療費-558,000)×0.01標準報酬月額28万~50万円約370~770万円80,100円+(医療費-267,000)×0.01標準報酬月額26万円以下~約370万円一律57,600円住民税非課税の人一律35,400円厚生労働省資料から作成たとえば会社で健康保険に加入していて、標準報酬月額が30万円、医療費の自己負担額が月10万円だったとすると、計算式は次のようになります。80,100円+(100,000円-267,000)×0.01=78,430この場合上限額は78,430円となり、超過した21,570円が高額療養費支払見込額です。この高額療養費支払見込額のうち、加入している健康保険によって8~10割を貸し付けてもらえます。高額医療費貸付制度の申請に必要なもの高額医療費貸付制度は、加入している健康保険に貸し付けを申請します。自分がどの健康保険に加入しているかわからない場合は、保険証の表面を見ましょう。市区町村名が書いてある場合は国民健康保険、それ以外の場合は職場(もしくは扶養者の職場)で加入した健康保険組合になります。申し込みの流れの例を見てみましょう。国民健康保険の場合の申請に必要なもの国民健康保険の場合は、貸し付けてもらえる金額は市区町村によって8~10割と差があります。また、申請方法や貸付方法、名称が異なる場合もあります。申請に事前の相談が必要な自治体もあるので、ホームページで申請方法や貸付条件を確認することが大切です。例として文京区で申請する場合は、医療機関の領収書・世帯主(申請者)の印鑑・国保の保険証・世帯主の預金口座がわかるものが必要です。職場の健康保険の場合の申請に必要なもの職場で加入する健康保険(社会保険)の保険証を持っている場合も、加入している保険によって手続き方法や貸付額などが変わります。例として協会けんぽ(中小企業の健康保険組合)の場合は、医療費請求書・保険証・高額医療費貸付金借用書・高額療養費支給申請書が必要になります。貸付が必要になった場合は、まず加入している健康保険に相談しましょう。高額医療費貸付制度の返済方法高額医療費貸付制度の返済方法も、加入している健康保険によって違います。高額療養費制度の利用が前提となっているので、支給された高額療養費で貸付金が相殺されることが多いです。返済方法についても、詳しくは加入している健康保険に確認しましょう。高額医療費貸付制度の注意点高額医療費貸付制度の利用には注意点があります。医療機関の承認が必要貸付の対象になるかどうかについて、受診した医療機関の承認が必要です。手続きをする健康保険だけではなく、医療機関にも確認を取りましょう。また、外来診療と入院では取り扱いが変わる場合もあります。高額療養費制度の利用が前提貸付は「高額療養費制度の給付額が支給されるための、当座の資金を補助すること」が目的となっています。そのため、高額療養費制度を利用できない場合は高額医療費貸付制度も利用できません。負担額が大きくなってしまっても、高額療養費制度の上限額以下だった場合は貸付も受けられないのです。また、申請できる期間も期限があります。申請できるかどうかは健康保険や自治体に確認しましょう。まとめ 高額医療費貸付制度の利用は情報収集が不可欠高額医療費貸付制度について解説してきました。給付の基準が一律で決まっている高額療養費制度とは異なり、高額医療費貸付制度は貸付額や利用資格・方法が加入している健康保険によって異なります。利用するためには、医療費の支出がどれくらいになったかしっかり把握すること、領収書などの記録を適切に保管しておくことが大切です。そして制度が適用になりそうなときは、適切な窓口(国保の場合は自治体、職場の健康保険の場合は健康保険組合の窓口)に相談しましょう。