卵子凍結とは、今は妊娠を望まないけれど、将来妊娠するため女性が、若いときの卵子を凍結(冷凍)保存することです。この技術は、年齢が上がると妊娠しにくくなる前に卵子を凍結(冷凍)保存します。これにより、凍結した時の卵子の状態を保ち、将来妊娠したいときにその卵子を使えるように準備することができます。将来の妊娠・出産のタイミングに合わせて使用します。最近は、「仕事を優先させたい」「やりたいことがある」といった事情がある女性から注目されています。卵子凍結の基礎知識卵子凍結とは、結婚や出産の時期を遅らせたい女性が前もって卵子を凍結(冷凍)保存させることで、加齢による卵子の質と量の低下に対処することを目的としています。加齢により、妊娠する力(妊孕性)が失われる可能性がある場合の選択肢として注目されています。卵子凍結のプロセスと手順卵子凍結するためには、検査とカウンセリングホルモン治療採卵と凍結を行います。順番に解説します。検査とカウンセリング卵子凍結を希望する場合、まず専門クリニックを受診し、検査とカウンセリングを行います。カウンセリングでは、卵子凍結の目的や方法、リスクについて詳しく説明されます。検査超音波検査:子宮や卵巣の状況を確認します。感染症・ホルモン値・AMH検査: 必要に応じて、医師の指示のもと採血を行います。AMHとは、卵巣予備能を評価する血液検査で、残存卵子数の目安となります。基礎体温測定: 排卵の有無や周期の規則性を確認します。カウンセリング不妊治療や卵子凍結に関する個別相談を行います。卵子凍結の目的、メリット、プロセス、費用などについて詳しく説明を受けられます。医学的適応(がん治療など)や社会的適応(キャリアなど)による凍結の違いについても説明があります※カウンセリングを行なっていない医療機関があります。カウンセリング希望の方は、初診予約時に、確認してください。ホルモン治療ホルモン治療は、特定のホルモン剤を使用して卵巣を刺激し、複数の成熟した卵子を採ることが目的です。排卵誘発月経開始の2〜3日目から排卵誘発剤を使用します。内服薬、注射、点鼻薬などがあり、患者さまのホルモン値や希望する卵子の数によって選択されます。採卵と凍結月経がきたら、医療機関を受診します月経3日前後に、受診します。血液検査を行い、卵巣機能を評価します。採卵に適した周期か確認し、問題なければスタートします。排卵誘発剤で卵子を育てる複数個、卵子を採るために排卵誘発剤を使用します。内服薬と注射を使います。どんな薬を使うかは、採血の結果や本人の希望により異なります。成熟した卵子を採卵する月経9日頃から通院し、血液検査や超音波エコーなどで、卵胞(卵子の入ってる袋)の発育を確認します。卵胞が順調に育ち、排卵しそうになると採卵します。採卵とは、成熟した卵子を、卵巣から細い針で採取し、体の外に取り出すことです。凍結保存採卵で獲得した卵子を、特殊な凍結保護液に浸し、急速冷却法で凍結保存します。卵子凍結の成功率とリスク成功率卵子凍結の成功率についてですが、年齢や卵子の質によって異なります。一般的に、若い年齢で凍結した卵子の方が、将来的に妊娠する可能性が高いとされています。しかし、凍結した卵子を使用した場合でも、必ずしも妊娠が保証されるわけではありません。凍結融解後の未受精卵子の生存率: 90~97%受精率: 71~79%臨床妊娠率: 36~61%卵子凍結の技術は日々進歩しているため、最新のデータを参照することも重要です。リスク卵子凍結にはいくつかのリスクがあります。排卵誘発剤の使用による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)採卵時の痛み採卵後の出血麻酔の影響で気分不快などのリスクも伴います。さらに、卵子凍結は将来の妊娠を保証するものではありません。パートナーの精子の状態やその他の要因によって受精(精子と卵子が受精しない)が成立しない場合もあります。卵子凍結は、将来妊娠する可能性を高める手段の一つですが、成功率とリスクを十分に理解した上で検討することが重要です。卵子凍結のメリット卵子凍結には以下のようなメリットがあります。将来の妊娠確率を高められる可能性がある若い時期の質の良い卵子を凍結保存することで、年齢が上がっても若い時の妊娠率を維持できる可能性があります。卵子は年齢とともに老化・減少するため、若い時期の卵子を使用することで妊娠率の向上が期待できます。妊娠・出産のタイミングの選択肢が広がるキャリアや人生設計に合わせて、妊娠を希望するタイミングで凍結した卵子を使用できます。生殖能力の保存卵子凍結は、女性が将来の妊娠に備えて生殖能力を保存するための医療技術です。この技術では、若い時期に卵子を採取して凍結保存することで、健康な状態を保つことができます。今は、仕事を優先したいけれど、将来的に妊娠・出産を希望する女性にとって有効な選択肢です。凍結した卵子は長期間保存できます。この技術は体外受精や顕微授精などの生殖補助医療と組み合わせて使用されます。ただし、卵子凍結には費用や副作用のリスクがあるため、個々の状況に応じて慎重に検討することが重要です。キャリアとの両立卵子凍結は、キャリアと出産の両立を目指す女性にとって重要な選択肢となっています。卵子の質は年齢とともに低下しますが、多くの女性がキャリアを積む時期と重なるため、卵子凍結はこのジレンマに対する解決策の一つとなっています。若い時期に卵子を凍結保存することで、キャリア形成に専念しながらも、将来的な妊娠の可能性を広げることができます。ただし、卵子凍結には限界もあります。高齢出産に伴う母体のリスクは軽減できないため、妊娠中の病気の発症や流産・早産のリスクは依然として高まります。卵子凍結を検討する際は、自身のライフプランや健康状態を考慮し、専門家に相談しながら慎重に判断することが重要です。遺伝的リスクの軽減卵子凍結は遺伝的リスクの軽減に直接的な効果はありませんが、卵子凍結により若い時点での卵子の質を保持できるため、高齢出産に伴う遺伝的リスク(染色体異常など)を軽減できる可能性があります。一方、卵子凍結自体は遺伝子の変異を修正したり、遺伝的リスクを軽減したりすることができません。凍結された卵子は、凍結時点での遺伝情報はそのままです。卵子凍結を検討するタイミング卵子の質と数は年齢とともに低下します。一般的に、妊娠率を維持できるのは36歳までが望ましいとされています。仕事や自身の夢を叶えるために、妊娠を後回しにする場合は、早めに卵子を凍結しておくことがおすすめです。最適な年齢は?日本生殖医学会によると、36歳未満が望ましいとされています。卵子の質が高く、卵巣がホルモン刺激に反応しやすい30代前半が理想とされています。36歳を過ぎると卵子の質が低下し始め、40代になると染色体異常のない卵子の割合が低下するため、卵子凍結の効果が減少するという報告があります。最適な年齢を決定する際には、個々のライフプランや将来の妊娠希望人数なども考慮することが重要です。http://www.jsrm.or.jp/guideline-statem/guideline201801.htmlライフスタイルと将来計画に基づく決定年齢を重ねると、卵子の数や質が低下するため、若いうちに質の良い卵子を凍結しておくことで、将来妊娠を希望する際にその卵子を使用することができます。これは晩婚化が進む現代社会において、重要な選択肢となっています。卵子凍結は、仕事を優先しキャリアを積みたい場合やパートナーがいない方など、今は妊娠を希望しない方にとっては有用です。確実に妊娠できるわけではないため、複数個の卵子を凍結することが推奨されています。卵子凍結の費用と経済的側面卵子凍結の費用と経済的側面について、以下のような情報があります。費用卵子凍結は保険適用外の自費診療です。費用は医療機関によって異なりますが、平均的な費用は約25〜40万円と高額です。凍結保存の費用に加え、妊娠を希望する際には受精・培養・胚移植のための追加費用が必要になります。経済的側面卵子凍結は、将来の妊娠・出産の可能性を高めるための選択肢の一つです。特にキャリアアップやパートナー探しに専念したい女性にとって重要な手段とされています。直接費用と間接費用卵子凍結には、直接費用と間接費用がかかります。以下にそれぞれの費用について詳しく説明します。直接費用診察:採卵までに行なった、血液検査(ホルモン値など)・超音波エコーなどの費用採卵: 卵巣刺激には薬剤が使用され、複数の卵子を採取するために行われます。卵子の凍結: 採取した卵子は、超急速ガラス化法を用いて凍結されます。この方法には、凍結保護成分を使用し、卵子を急速冷却することで高い生存率を確保します。保存費用: 凍結した卵子は液体窒素中で保存されます。この保存には年間の維持費がかかります。間接費用通院費用: 卵子凍結を行うためには、複数回の通院が必要です。交通費や時間がかかります。将来の体外受精費用: 凍結卵子を使用する際には、体外受精や顕微授精が必要となります。希望する場合、多額の費用がかかります。卵子凍結の費用は、自費診療のため、医療機関によって異なります。具体的な金額については医療機関に問い合わせましょう。保険適用と補助金制度保険適用について現在、日本では卵子凍結保存は保険適用外の自由診療となっています。そのため、全額自己負担となり、費用が高額になります。補助金制度一部の自治体では卵子凍結保存に対する補助金制度を設けています。ご自身の自治体を確認してください。卵子凍結後の流れと生活卵子凍結後は、特に制限される事項はありませんが、妊娠を望む際は、喫煙は母体と胎児に悪影響を及ぼすと報告があるので、禁煙が推奨されます。また、肥満も月経異常や不妊の原因になりますので、運動習慣をつけることが推奨されています。運動を始めるには、まずは趣味としてスポーツを始めてみたり、通勤時に一駅分歩くなど、無理のない範囲から始めてみると良いでしょう。自然に運動習慣を身につけることができます。定期的な卵子の状態チェック排卵誘発薬を使用した後は、卵巣が過剰に反応し、複数の卵胞が育ちます。卵巣が腫大し、下腹部痛や腹水、胸水などの症状を呈する状態を指します。特に体外受精などの不妊治療において、卵子の数を増やすために行われる卵巣刺激治療の副作用として発生することがあります。妊娠へのステップ妊娠を希望する場合、卵子凍結をしたクリニックをカップルで受診します。パートナーの、精液検査や血液検査をし、問題がないことを確認。凍結保存していた卵子を融解し、精子と出会わせて、受精卵ができたら、移植の(子宮に戻す)準備をします。まとめ卵子凍結は、キャリアアップと妊娠出産を目指す女性にとって、重要な選択肢となっています。特に、若い時の卵子を凍結保存することで、将来的に妊娠の可能性を維持することが期待されています。しかし、自費診療(2024年8月現在)なので多額の治療費がかかります。さらに、凍結した卵子を使用する際には、体外受精や顕微授精が必要となり、追加の治療費が発生します。また、卵子凍結には薬の副作用によるリスクも伴います。卵巣を刺激するための薬剤が使用されるため、健康への影響を考慮する必要があります。卵子凍結が自身にとって本当に必要かどうか、慎重に考えることが必要です。キャリアと妊娠・出産の両立を目指す女性にとって、卵子凍結は一つの選択肢ですが、費用やリスクを十分に理解した上で判断することが重要です。参考資料https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/touketsu/gaiyou.html卵子凍結に係る助成(事業の概要)https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:9b93a154-92f8-4574-b857-b85365bd7f4d 高橋裕子, 4.女性の禁煙, 日本循環器学会専門医誌, 循環器専門医第13巻第2号, 2005年9月, pp.354-360,(2024年8月25日取得)