「妊活におすすめな漢方薬が気になる!」「漢方はどこで買うべき?ドラッグストアでもよいのかな」と、悩まれていませんか?不妊の代表的な漢方薬の一つに当帰芍薬散があります。「女性の聖薬」とよばれるほど、不妊に限らず女性特有の不調によく使われる漢方薬なため、すでにご存知の方もいるかもしれませんね。当帰芍薬散はドラッグストアでも購入でき、漢方薬局や病院で処方されることもあります。ただ、妊活の漢方薬は他にもあり、自分の体質にあうものを選ぶことが大切です。本記事では、漢方薬剤師の経験がある筆者が当帰芍薬散の妊活への効果や向いている人など、解説します!入手方法や選び方についても紹介するので、妊活に使われる漢方薬が気になっている方はぜひ参考にしてください。◉この記事でわかること当帰芍薬散はそもそもどんな漢方薬?当帰芍薬散は不妊症をはじめ生理不順や生理痛など、主に女性特有の不調を改善する漢方薬です。ここではさらに、当帰芍薬散の成分と主な効果や由来を紹介します。成分と主な効果当帰芍薬散は以下の6つの生薬が成分として含まれており、不妊症や生理不順などの婦人科疾患だけでなく、妊娠中の不調などにも効果があります。〜配合されている6つの生薬〜 当帰(トウキ) 川芎(センキュウ)芍薬(シャクヤク) 茯苓(ブクリョウ)白朮(ビャクジュツ)沢瀉(タクシャ)〜効能効果〜 生理不順、生理中の不調、不妊症、更年期障害(頭痛、めまい、肩こりなど)、貧血、倦怠感、妊娠中の症状(むくみ、習慣性流産、痔、腹痛)など生薬や効能効果の多さにおどろいた方も多いのではないでしょうか?生薬とは、植物や動物や鉱物などで薬効がある一部分を加工してつくられた漢方薬の原料です。漢方薬は2種類以上の生薬を定められた量で組み合わせてつくられるため、一つの漢方薬で複数の症状にアプローチできる特徴があります。当帰、川芎、芍薬は主に不足している血を補い、血流をよくしたり、体を温める生薬です。一方、茯苓、白朮、沢瀉は体内の余分な水分を除く生薬なため、妊娠中のむくみなどにも効果的です。なお、女性に使われることがほとんどですが、冷え性で貧血がみられるなど、体質があえば男性に使われることもあります。当帰芍薬散は6つの生薬により、不妊症や生理トラブルなどにアプローチしてくれる女性の心強い味方の漢方薬です。名前の由来と歴史当帰芍薬散の歴史は古く、漢時代の「金匱要略(キンキヨウヤク)」という中国の古典で紹介されています。金匱要略には、当帰芍薬散について「妊娠中の腹痛や婦人の諸種の腹痛に用いる」と記されているようです。なお、漢時代は日本では弥生時代位にあたります。当帰芍薬散は約2000年以上も前から存在し、古来より婦人科疾患に対して実績がある漢方薬であることが分かります。すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、当帰芍薬散のメインの生薬でもある「当帰」と「芍薬」が名前の由来です。さらに「当帰」には、体が弱くて子供ができず実家に戻された妻が当帰を飲むと元気が戻り、夫の元へ「当(まさに)帰るべし」状況になった、という由来もあるようです。漢方医学では体型や顔色など、見た目も参考にして体質を判断します。当帰芍薬散は冷え性で虚弱体質向けであることから、見た目は色白で華奢な女性に使われやすく「芍薬美人」という言葉もあるそうです。なぜ妊活に使われるの?当帰芍薬散は血を補い、体を温め、水分代謝をよくすることで、妊娠しやすい体づくりをサポートします。次に当帰芍薬散の妊活への効果を詳しく解説します。当帰芍薬散の作用と妊活への効果漢方医学では、妊活中は「血」の状態をよくすることが大切と考えられています。当帰芍薬散は子宮や卵巣などに栄養をあたえる「血」の不足を補います。人は気・血・水でつくられていて、気血水が過不足なく、正常に巡っている状態が健康という、漢方理論があります。気…生命エネルギーで体のあらゆる活動を支えるパワー 血…体に栄養や潤いを与えたり、精神を安定させる液体(血液と近いイメージです)水…生命維持に必要な血液以外の液体すなわち気血水のどれかが欠けると不調がでるようになるため、気血水のバランスを整える漢方薬が使われます。例えば、水の巡りが悪くなり、むくみやめまいなどの「水毒」の症状がでたときは水の巡りをよくする漢方薬が適しています。不妊や生理痛など女性ホルモンと関連する婦人病は気血水の中でも「血」と関わりが深く、「血の道症」ともよばれます。血が足りない状態を「血虚(けっきょ)」、血の巡りが悪いことを「瘀血(おけつ)」とよび、どちらも不妊や生理不順、冷えにつながります。冷えは妊活の大敵です。冷えで全身の血流が悪くなると、卵巣や子宮への栄養が不足し妊活によくない影響をあたえます。なお、冷えは血だけではなく、体内に余分な水分がたまることでおこるタイプの冷えもあります。当帰芍薬散は血の不足(血虚)や水の巡りが悪い状態(水毒)を整えることで、妊娠しやすい体質改善をする漢方薬です。妊活に重要な生理周期の調整をサポート古来より「子を求めるものはまず生理を調整する」と言われるほど、生理周期を整えることは妊活の基本です。排卵がスムーズにおこなわれていないと、生理不順や不妊の原因になります。当帰芍薬散は動物実験で排卵誘発作用を示すデータの報告もあり、生理不順と不妊症への効果も認められています。向いている人は?おすすめな食事や生活習慣当帰芍薬散は不妊症に効果がありますが、どんな方にも向いている訳ではありません。 というのも、当帰芍薬散に限らず漢方薬は西洋薬と異なり病名や症状だけで使い分けはせず、体質にあうものを選びます。当帰芍薬散が向いているタイプやおすすめの食事や対処法を紹介します。向いているタイプ当帰芍薬散は虚弱体質で冷え性、貧血気味、むくみやすいタイプの方に向いています。漢方医学では、様々な漢方独自の理論を組み合わせて、その方の体質を診断します。気血水も代表的な漢方理論の一つです。他にも、体力や病気への抵抗力から診断する「虚・実(きょ・じつ)」の考え方があります。「虚・実」と「気血水」それぞれの理論で当帰芍薬散が向いているタイプをみると以下の通りになります。〜虚・実からみたタイプ〜「虚」のタイプで、以下の体質の方に向いています。疲れやすい痩せ型、筋肉が少ない色白冷え性〜気血水からみたタイプ〜「血虚」や「水毒」のタイプに当てはまりやすく、以下の症状がみられやすいです。血虚の症状貧血栄養不足で肌や髪につやがない動機爪が割れやすい集中力の低下 など水毒の症状むくみめまい などおすすめな食事と生活習慣体質は生活習慣や食事、季節、年齢、環境などの影響を受け、途中でかわることもあります。体質改善するためには、漢方以外にも食事や生活習慣の見直しは欠かせません。妊活中は体を冷やさない以外にも「血」の状態をよくすることが大切です。とくに血虚タイプの方は血を補う食べ物を積極的に取り入れたり、以下の生活習慣を取り入れることがおすすめです。〜食事〜黒豆、黒ごま、黒キクラゲなどの黒食材(手軽にとるなら黒豆茶もおすすめ!)肉類、人参、かつおなどの赤食材小松菜、ほうれん草〜生活習慣〜偏食、無理なダイエット、長風呂やサウナは控えめにするただ、妊活中はストレスも大敵です。毎日続けてこその生活習慣の改善のため、無理のない範囲で続けてみましょう。当帰芍薬散の副作用や注意点漢方薬は副作用が少なく、安全に服用できるイメージが強いと思います。ただ、漢方薬でも副作用はあるため、注意は必要です。次の当帰芍薬散の副作用や服用に関する注意点を紹介します。主な副作用と対処法当帰芍薬散の主な副作用は以下の通りです。発疹、かゆみなどの過敏症肝機能の異常食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、胃腸の不快感などの胃腸症状服用しはじめてお腹の調子が悪かったり、肝機能の数値に異常がでるなど、上記の症状がみられる場合は医師や薬剤師に相談しましょう。皮膚症状は薬によるアレルギーの可能性もあるため、服用を中止し早めに皮膚科へ受診するなどの対処法をとるようにしてください。服用に注意が必要な人次に該当する人は服用に注意が必要なため、服用前に医師や薬剤師に相談しましょう。胃腸が弱い方や食欲不振、吐き気などがある今まで薬などで発疹、発赤、かゆみなどをおこしたことがある他に漢方薬や病院での治療を受けている飲み方の注意点漢方は購入した漢方薬の説明書もしくは、処方先の医師の指示通りに服用するようにしましょう。一般的に漢方薬は食前(食事の30分〜1時間前)に飲むことが多いです。漢方は他のものと混ぜると吸収に影響がでる可能性もあるため、空腹時に白湯や水での服用が基本です。なお、飲みづらかったり、飲み忘れで、漢方を毎日服用できていないと効果が下がってしまいます。漢方でしっかり体質改善をしていくためにも、服用で困ることがあれば医師や薬剤師に相談しましょう。医師や専門家と相談する重要性前述の通り、当帰芍薬散は副作用や注意点もあり、中には体にあわない人もいます。漢方は個々の体質や症状にあうものを選ぶことが大切です。不妊症は今回紹介したタイプ以外もあるため、自分にぴったりな漢方を医師や専門家の相談なしに選ぶのは容易なことではありません。安全かつ効果的に服用を続けるためには、医師や専門家への相談は重要です。当帰芍薬散はどこで手に入る?入手方法の選び方のコツ当帰芍薬散は以下の3つの場所で入手できます。病院で処方してもらうドラッグストアで購入漢方薬局で購入それぞれメリット、デメリットがあるため、自分の予算や服用する目的にあった入手方法を選ぶことがポイントです。3つの場所の特徴を紹介するので、どこで購入するか悩んでいる方は参考にしてください。※病院や漢方薬局では希望しても、当帰芍薬散が必ず処方してもらえる訳ではありません。ドラッグストアで購入ドラッグストアでは、手軽に自分が希望した漢方薬を購入できるメリットがあります。時間がなくどの漢方がよいか自分で選べる方におすすめです。悩む場合は漢方薬の販売メーカーのホームページの情報を参考にしたり、ドラッグストアにいる薬剤師や登録販売士に相談してみましょう。病院で処方してもらう病院の婦人科や不妊専門施設で当帰芍薬散が処方されることがあります。病院で処方してもらう場合、不妊症の検査や他の治療も受けられます。不妊は排卵がおきていない以外にも、卵管が詰まっていたり、子宮筋腫などが原因になることも多いです。不妊原因によっては漢方薬で治療が難しい場合もあるため、病院で処方を受けると早めに適切な治療をうけられるメリットがあります。漢方薬局で購入する漢方薬局自体、数が少なく敷居が高いと感じる方も多いと思います。イメージとしては、ドラッグストアの漢方専門版です。漢方薬局は病院で扱う漢方よりも種類が豊富で、体質にあわせて生薬の量や種類を調整してくれます。また、漢方のプロが自分にあう漢方を選んでくれるだけではなく、体質にあう食事や生活習慣改善のアドバイスもしてくれます。漢方薬局では自由診療なため予算は高めですが、自分の体にしっかり向き合い、オーダーメイドの漢方を服用したい方におすすめです。まとめ不妊症をはじめ生理不順や生理痛などを改善する女性の心強い味方でもある当帰芍薬散。当帰芍薬散は、主に子宮や卵巣に栄養をあたえる血を補い、体を温め、水分代謝をよくすることで妊娠しやすい体づくりをサポートしてくれます。とくに、疲れやすいなどの虚弱体質、冷え性、貧血気味、むくみやすいタイプの方に向いている漢方薬です。妊活の漢方が気になっている方の参考になればうれしいです。参考文献:1)株式会社ツムラ.当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)添付文書.20142)クラシエ株式会社.クラシエ当帰芍薬散錠添付文書3)横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター編.漢方重要処方60 改訂版.20194)柳沢侑子.よくわかる漢方・薬膳.2023