「診察で急に休みをとらなくちゃいけない」「不妊治療について上司に相談しにくい」と悩んでいませんか?不妊治療中は通院回数が増え、急な休みが必要になることがあります。そのため、仕事との両立が難しく、負担に感じる方も多いでしょう。また、治療について職場の人に知られたくない方もいると思います。そんなときに役立つ「不妊治療連絡カード」をご存じでしょうか?このカードをうまく活用すると、治療と仕事の両立がしやすくなることがあります。この記事では、不妊治療カードの活用方法やメリットを紹介します。仕事と治療の両立に悩む方は、ぜひ参考にしてくださいね。不妊治療連絡カードとは?不妊治療連絡カードとは、不妊治療を受ける人がスムーズに職場へ事情を伝えたり、企業独自の制度を利用するために厚生労働省が作成したカードです。厚生労働省のホームページよりダウンロードができ、診断書としても活用することができます。厚生労働省の調査によると「不妊治療をしていることを知られたくない」「周りに気を使われたくない」と感じ、治療について職場に話していない人が多いことが分かっています。ただ、実際には通院で頻繁に休まなくてはいけないことから、職場の理解は欠かせません。そんな背景をもとに、企業側が不妊治療への理解を深め、働きやすい環境づくりに役立てる目的で不妊治療カードはつくられました。不妊治療と仕事を両立している人はどれくらい?仕事と治療の両立は働く方にとって大きな課題です。実際、どれくらいの人が悩んでいるのかみていきましょう。治療と両立ができない人は約3割厚生労働省の「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」によると、不妊治療と仕事を両立している人は約5割という結果でした。一方、約3割の方は両立ができず、次のような選択をしています。退職(10.9%)雇用形態を変更(7.4%)両立ができず治療を中止(7.8%)現状を維持できず、どちらかを諦めざるをえなかった方が多い状況です。また、不妊治療を受けたことがある夫婦は全体の22.7%にのぼり、4.4組に1組の割合です。2022年には10人に1人が体外受精でうまれており、年々不妊治療を受ける人は増加傾向といえます。そのため、今後も仕事と両立に悩む人が増えることが予想されます。両立が難しい理由は?両立が難しいと感じる主な理由には、次のようなものがあります。通院回数が多い仕事との日程調整が難しい精神的な負担が大きい体調や体力面での負担がある不妊治療では、卵の成長を確認するために頻回に採血や超音波検査が必要です。そのため、通院回数が増え、医師から告げられた通院日に外せない仕事が入るなど、仕事の日程調整が難しくなります。精神的な負荷はもちろんですが、ホルモン剤による副作用で身体的な負荷がかかることも少なくありません。働く方にとって、不妊治療と仕事の両立は心身ともに大きな負担になることが調査結果からもわかります。休職制度はあるの?実際の支援制度の現状現状、法律による休暇・休業制度はありませんが、企業独自の制度として定められていれば休職や休暇が可能です。 ただ、厚生労働省の調査によると、不妊治療者に対して支援を行っている企業は全体の3割にとどまることがわかりました。さらに半数以上の企業が、不妊治療を行っている従業員の把握ができていないと回答しています。多くの方が治療と仕事の両立が難しいと感じているにも関わらず、十分な支援はおこなわれていない現状です。これらの背景からも、厚生省は「不妊治療連絡カード」の活用を呼びかけています。不妊治療連絡カードの費用や使い方は?不妊治療連絡カードは、実際どんなものなのか、また費用も気になる方も多いでしょう。不妊治療カードの利用は以下の流れでおこなわれます。①治療を受けている病院へ相談②主治医に業務内容を伝えたうえで、以下のような内容を記載してもらう不妊治療の実施時期(予定時期)とくに配慮が必要な事項不妊治療の現状不妊治療のスケジュール目安 など③会社へカードを提出④会社側はカードの内容を確認し、プライバシーに配慮しつつ必要な対策をおこなう休暇制度や両立支援制度の利用申請を促す勤務時間や休暇日の調整 などなお、連絡カードの費用や作成にかかる時間は病院によって異なります。無料の場合もあれば、2000〜5000円程度かかる病院が多いようです。また、作成には即日対応可能な病院もあれば、1週間程度かかることもあります。連絡カードは厚生労働省のホームページからダウンロードができますが、まずは病院へ費用や作成時間も含めて確認してみましょう。不妊治療連絡カードを活用するメリット不妊治療連絡カードを活用すると、次のようなメリットがあります。企業独自の制度を利用する際に、診断書として活用できる職場へ治療のことを話すきっかけができる自分で治療のスケジュール内容を細かく説明しなくてよい企業側が不妊治療について理解を深められる中には、企業側が不妊治療に関する知識不足で通院回数や治療の負担がどのくらいなものか分からない、といったケースも少なくありません。不妊治療カードには、治療の状況やスケジュールの目安が記載されているため、企業側も治療に対する理解が深まるメリットがあります。このカードにより、企業が治療者に対して両立のサポートをしやすくなることが期待されています。不妊治療中は制度を上手に活用しよう不妊治療中は通院の負担があることから、仕事との両立は大きな課題です。中にはキャリアをあきらめ、不妊治療を優先するために退職する方も少なくありません。治療と仕事を両立をする方はこれから増えることが予想されるため、そんな中で企業側の治療に対する理解とサポートは欠かせません。会社によっては、不妊治療に対応した休暇や休職制度を導入していたり、テレワークや時短勤務など柔軟な働き方を提供しているところもあります。こうした制度を利用する際にも、不妊治療カードは役立ちます。まずは、自分の会社の制度を確認しましょう。不妊治療カードを活用することで、治療と仕事の両立がしやすくなる人が増えることを祈っています。参考資料:1)厚生労働省.不妊治療連絡カードをご活用ください2)厚生労働省.令和5年度不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について