流産や死産を繰り返す場合、不育症が疑われることがあります。流産や死産は、とてもつらい経験です。もし繰り返す場合は、不育症の検査を受けることがすすめられます。不育症の多くは原因がはっきりしませんが、リスクを高める要因が見つかることもあります。中には、治療によって改善が期待できるものもあります。本記事では、不育症の検査内容や費用についてわかりやすく解説します。ぜひ、参考にしてくださいね。不育症の検査内容不育症の検査では、主に血液検査と子宮形態検査を行い、流産や死産の原因となる可能性のあるリスクを調べます。ここでは代表的な検査とどのようなことが分かるのかを簡単に紹介します。1.血液検査血液検査では、以下の項目を調べます。抗リン脂質抗体検査血液検査で抗リン脂質抗体の有無を調べます。抗リン脂質抗体とは、本来守るべき自分の体を攻撃してしまう自己抗体の一種で、これがあると血液が固まりやすくなり、血栓ができやすい体質になります。流産を繰り返す一因になり、このような病気を抗リン脂質抗体症候群とよびます。血液凝固因子の検査血液が固まりやすい(凝固しやすい)傾向がないかを確認します。 プロテインS・プロテインCの欠乏などが見つかることがあります。血液が過度にかたま りやすくなると、赤ちゃんに栄養が行き届かなくなり、流産のリスクが高まることがあります。内分泌検査血液検査で甲状腺ホルモンや血糖値(糖尿病の有無)を確認します。甲状腺ホルモンの値が高すぎても低すぎても、不育症の原因になることが従来から言われています。また、糖尿病があると流産のリスクが高くなることが言われています。 染色体検査夫婦の血液を採取し、染色体異常がないか調べる検査です。夫婦どちらかに染色体異常(転座など)があると流産を繰り返すリスクが高まります。2. 子宮形態検査子宮の形に異常がないかを確認するために、以下の検査を行います。超音波検査(経腟エコー)子宮や卵巣の状態を外来で手軽に確認できる検査です。子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどの有無、卵巣の状態などが分かります。子宮卵管造影検査子宮頸管から造影剤を注入し、X線で卵管や子宮の形を確認する検査です。子宮奇形(双角子宮、中隔子宮)や卵管の通過性も確認できるため、不妊症の検査としても用いられます。子宮鏡検査内視鏡を子宮頸管から挿入し、子宮内部を直接観察する検査です。中隔子宮や子宮内の癒着、ポリープなど、超音波検査では確認しにくい細かな異常を調べます。また、軽度のポリープや軽度の癒着などは、その場で切除や処置ができることもあり、検査と治療を同時に行う場合もあります。不育症検査の費用目安不育症の検査の多くは保険適用されますが、一部の検査(まだ研究段階で有効性が確立されていないものや夫婦の染色体検査など)は自費となることがあります。実際の費用は、医療機関や保険適用の有無、検査項目の数によって異なります。以下は保険適用時の目安です。詳しい金額については、受診前に医療機関へご確認ください。1. 血液検査費用目安:1000~10000円程度。血液検査では、抗リン脂質抗体、血液凝因子、内分泌の異常などを調べます。なお、夫婦の染色体検査は保険適用ができないケースが多いです。2.子宮形態検査検査の種類によって費用はかわりますが、目安は以下の通りです。超音波検査:約1600円~子宮卵管造営検査:約6000円~子宮鏡検査:約3000円~自治体の補助制度について各都道府県や自治体によっては、不育症に特化した助成制度を設けている場合があります。助成の対象範囲や金額、申請条件は自治体ごとに異なるため、お住まいの市町村の窓口に問い合わせをして確認してみましょう。また、助成を申請する際には診断書や領収書の提出が必要になる場合が多いため、受診時の領袖などは忘れず保管しておくことをおすすめします。不育症の検査を受けるまでの流れ最後に実際に不育症の検査を受けるまではどのような流れがあるのか説明します。1. 産婦人科・不妊治療専門クリニックへの相談 まずは、これまでの妊娠歴や流産・死産の回数、時期などを医師に伝え、問診を行います。そのうえで、不育症の検査が必要かどうかを確認 します。2. 不育症検査の実施 検査内容は医療機関によって異なりますが、血液検査や子宮の形態を調べる検査など、保険適用されているものが中心になります。また、夫婦の染色体検査などは保険適用外のことが多く、必要かどうかは専門家と相談しながら慎重に進めることが大切 です。3. 検査結果をもとに治療方針を決定 検査によって原因が特定できた場合、それぞれのリスク因子に応じた治療や対策 が行われます。例えば、抗リン脂質抗体や血液凝固因子 に異常があった場合 → 血液をサラサラにする内服薬 を使用する子宮の形態異常 があった場合 → 手術を検討するただ、不育症のリスク因子が特定できないケースは全体の60%以上 あります。その場合、特別な治療を行わなくても、最終的に赤ちゃんを授かる方も多くいらっしゃいます。4. 心のケアも大切に不育症の検査や治療の過程では、精神的な負担が大きくなりやすい ものです。ストレスを軽減し、気持ちを整理するためにも、カウンセリングを受けることもひとつの方法 です。不育症かも?と気になったら相談を流産を繰り返すことは、心にも体にも大きな負担がかかるものです。不育症の原因は不明なことも多いですが、検査を受けることで分かることもあり、場合によっては治療が必要なケースもあります。「もしかして不育症かも…」と感じたら、一人で悩まず、産婦人科や不育症外来、不妊治療専門クリニックに相談してみましょう。本記事が少しでも、不育症に悩まれている方の参考になれば幸いです。参考1.メディカルレビュー社.データから考える 不妊症・不育症治療