2022年4月から、不妊治療の一部が健康保険でカバーされるようになり、不妊治療にかかる金銭的負担が軽減されました。しかし、保険適用になったといっても、実際に自己負担がどの程度必要なのか心配な方も多いと思います。この記事では、保険適用の条件と、適用される治療法について説明します。保険の適用を受けられるかどうか、費用がどれくらいかかるのかを確認できます。経済的な不安を少しでも解消できるように、わかりやすくお伝えしていきます。保険適用となる条件すべての人が保険適用されるわけではなく、次の３つの条件を満たすことが必要です。パートナーの同席が必要戸籍の確認回数制限と年齢制限順番に解説します。戸籍の確認入籍しているカップル:婚姻関係を確認します。事実婚のカップル:治療をして妊娠・出産した子を認知する意思があるかを確認します。病院やクリニックの方針で、入籍していないと治療をしない場合があります(事実婚が認められない)。受診する前に、確認してください。パートナーの同席が必要来院が難しい場合は、オンラインでも可能です。パートナーの同意がなければ、保険適用にはなりません。回数制限と年齢制限男性の年齢制限はありませんが、女性は治療期間の初日に43歳未満である方が対象です。すべての人が、保険適用されるわけではなく、いくつか条件があります。回数は、移植が終わったら1回にカウントされます。 初めて治療を開始するときの女性の年齢回数制限39歳以下通算6回まで(子ども1人に対して)40歳以上43歳未満通算3回まで(子ども1人に対して)不妊治療の保険適用になる治療内容は？2022年3月までは、不妊症と診断されても医療保険が適用されることはほとんどなく、治療費は自費で支払うことがほとんどでした。特に体外受精は保険適用外で、1回あたり40万円以上の費用がかかり、大きな経済的負担となっていました。しかし、条件を満たせば保険が適用され、治療費の3割を負担するだけで治療を受けられるようになります。今回の改正で対象となった治療は以下の通りです。一般不妊治療(タイミング法・人工授精)生殖補助医療(体外受精・顕微授精)順番に説明していきます。一般不妊治療タイミング法と人工授精のことをいいます。一般不妊治療は、年齢制限と回数制限はありません。タイミング法自然妊娠を目的とした治療法です。基礎体温や採血でホルモン値の確認をします。必要に応じて、超音波検査で卵胞の大きさを確認し、患者さまがいつ排卵するかを診察します。性交渉するタイミングを適切にアドバイスする治療です。人工授精タイミング法で、妊娠しない場合、ステップアップとして行われる治療法です。排卵日付近に、カテーテル(細い管)で子宮内に精液を注入します。生殖医療補助体外受精とは、採卵して、体の外で精子と卵子を出会わせる方法です。顕微授精とは、卵子に直接精子を注入して受精させる方法です。体外受精と顕微授精は年齢制限と回数制限があります。体外受精排卵間際の卵子を、体の外に取り出します。パートナーの精子と受精させて、受精卵を子宮に移植して着床させる方法です。顕微授精元気な精子を選びます。卵子の中に直接入れて受精させます。一般的に体外受精は、卵子に精子を振りかけますが、顕微授精は精子の状態がよくない場合に適用されます。保険適用になるとどれくらいの金額になる？あくまでも目安になりますが、費用はどれくらいかシミュレーションしていきましょう。タイミング法3,000円〜10,000円前後一般不妊治療管理料:750円(3カ月に1回)※使用する薬剤の量や種類、血液検査などの費用により異なります。人工授精6,000円〜13,000円前後一般不妊治療管理料:750円(3カ月に1回)人工授精:5460円※使用する薬剤の量や種類、血液検査などの費用により異なります。体外受精ケース①採卵で6個、卵子がとれた。新鮮胚移植をする。胚盤胞まで育った受精卵(余剰胚)3個を凍結する場合。治療内容費用採卵術9,600円採卵個数(6〜9個)16,500円タイムラプス(先進医療)25,300円体外受精12,600円受精卵・胚培養管理料(2〜5個)18,000円新鮮胚移植22,500円胚盤胞加算(2〜5個)6,000円胚凍結保存管理料(胚凍結2〜5個)21,000円胚凍結保存維持管理料 (1年間)10,500円合計142,000円上記の金額の他に、採卵〜移植までの診療費（再診料・検査費・薬剤費等）は別途、請求があります。顕微授精ケース②採卵で3個、卵子がとれた。胚盤胞まで育った受精卵(余剰胚)2個を凍結する場合。治療内容費用採卵術9,600円採卵個数(2〜5個)10,800円タイムラプス(先進医療)25,300円顕微授精(2〜5個)20,400円受精卵・胚培養管理料(2〜5個)18,000円胚盤胞加算(2〜5個)6,000円胚凍結保存管理料(胚凍結2〜5個)21,000円胚凍結保存維持管理料 (1年間)10,500円合計121,600円上記の金額の他に、採卵〜移植までの診療費（再診料・検査費・薬剤費等）は別途、請求があります。体外受精+顕微授精ケース③採卵で16個、卵子が取れた。胚盤胞まで育った受精卵(余剰胚)9個を凍結する場合。治療内容費用採卵術9,600円採卵個数(10個)21,600円タイムラプス(先進医療)25,300円体外受精+顕微授精(6〜9個)36,300円受精卵・胚培養管理料(10個以上)31,500円胚盤胞加算(10個以上)9,000円胚凍結保存管理料(胚凍結6〜9個)30,600円胚凍結保存維持管理料 (1年間)10,500円合計174,400円上記の金額の他に、採卵〜移植までの診療費（再診料・検査費・薬剤費等）は別途、請求があります。「高額療養費制度」の利用でさらに負担を減らせる高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。自己負担限度額は年齢や所得により異なります。注意点として、この制度は保険適用の治療にのみ利用できます。2022年4月から不妊治療が一部保険適用となりましたが、全ての治療が対象になるわけではありません。自由診療のみの治療や、保険診療と併用する先進医療は対象外です。 まとめ保険適用前は自費診療でしたので、治療費が高額で経済的な不安があったと思います。しかし、一部が保険適用になったことで、それまで経済的理由で治療を見送っていた夫婦にとっても、治療を受けやすくなったのではないでしょうか。年齢制限がありますので、女性の年齢が40歳未満の方は、カップルで相談して受診しましょう。参考資料厚生労働省,不妊治療の保険適用について(2024年6月6日取得) https://www.mhlw.go.jp/content/000901932.pdf