不妊治療が保険適用になったことで、以前よりも体外受精について耳にする機会が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。これから体外受精を含めた不妊治療を考えている方にとって、実際に体外受精で産まれた子は多いのか気になるところですよね。結論として、体外受精で産まれる子は年々増加傾向です。この記事では日本産婦人科学会から発表された最新のデータを参考に、体外受精児の出生数について紹介します。※本記事の内容は2024年9月時点の情報です。そもそも体外受精とは?体外受精と聞いて「特別な人が受ける治療法」と考える方は多いかもしれません。「体外」という言葉がつくため、人工的なイメージがあり、少し不安を覚える方もいるかもしれませんね。まずは、体外受精の流れやどんな人が受けるのか見ていきましょう。体外受精の流れ体外受精とは、体外で受精させた受精卵を子宮に戻し、妊娠を目指す不妊治療の一つです。不妊治療は身体的負担や費用が少ない方法から始め、段階的に進めていきます。体外受精は、その中でも最終段階の治療法で以下の流れで行われます。卵巣刺激:排卵誘発剤を使い、卵胞を成長させる採卵:卵胞が十分に成長したら、卵巣から卵子を取り出す受精:採取した卵子と精子を体外で受精させる培養:受精卵を専用の培養液で培養する胚移植:良好な胚を子宮に戻す※細胞分裂を開始した受精卵は「胚」と呼ばれます 妊娠が成立する過程の中でも、受精だけを体の外でおこなうため、体外受精とよばれます。体外受精はどんな人がするの?体外受精は、以下のような理由で自然妊娠が難しい方が対象です。両側の卵管が詰まっている方卵子や精子に問題があり、受精が難しい方精子が極端に少ない男性不妊原因不明の不妊タイミング法や人工授精で妊娠できなかった方不妊検査で卵管や受精に問題があったり、重度の男性不妊だと自然妊娠が難しいため、体外受精をはじめから勧められるケースもあります。一方、不妊原因が見つからなくても、高齢などで自然妊娠にいたらないと早めに体外受精へ進む方も多いです。2022年の体外受精で産まれた子供は10人に1人と過去最多日本産婦人科学会の最新のARTデータブック(体外受精・胚移植等の臨床実施成績)によると、2022年に体外受精で産まれた子供は過去最多の7万7206人でした。また、厚生労働省のデータでは2022年の総出生数は77万759人のため、10人に1人が体外受精で産まれた計算になります。なお、ARTデータブックとは、国内の体外受精に関するデータを集計したものです。出産時の詳細も含まれていることから、集計には時間がかかるため、約2年前のデータが毎年公開されています。直近のデータからも、体外受精で産まれた子供は増加傾向にあることが分かります。体外受精で産まれる子の数と割合は年々増加傾向!増えた理由は?受精で産まれた子供は増え続けています。2021年には体外受精によって産まれた子供の数が前年より約9400人増え、過去最多を更新しました。そして2022年には、さらに約7,000人増加し、2年連続で過去最多を記録しました。2018年には16人に1人だった体外受精で産まれる子供の割合が、2022年には10人に1人にまで増えています。約5年間で大きく増加していることがわかります。また、2022年の体外受精の治療件数は54万3,630件となり、前年より4万5,000件以上増加しています。治療件数は2016年から2020年までほぼ横ばいでしたが、2021年から再び増加傾向です。これらのデータから、体外受精で産まれる子供が年々増えている背景の一つに、体外受精を受ける人の増加があることがわかります。次に、体外受精を受ける人が増えている理由を3つご紹介します。晩婚化による影響晩婚化に伴い、加齢による不妊に悩む人が増えており、結果として体外受精を受ける人も増えています。2022年の平均初婚年齢は、夫が31.1歳、妻が29.7歳でした。2010年と比べると、夫は0.6歳、妻は0.9歳上がっており、結婚する年齢が徐々に遅くなっていることがわかります。一般的に妊娠率が最も高いのは男女ともに20代です。とくに女性の場合は年齢が上がるにつれて卵子の質が低下するため、妊娠しにくくなるとされています。そのため、晩婚で妊娠を考え始めた時点ですでに妊娠しやすい時期を過ぎていることも多く、結果として体外受精を受ける人が増えています。仕事との両立最近では、結婚後も仕事を続ける女性が増え、共働き世帯も増加しています。30代はちょうどキャリアの形成期にあたり、管理職などを任される女性も多く、妊娠よりも仕事を優先する方も少なくありません。晩婚化と同様に、キャリアを優先することで妊活の開始時期が遅れることも、原因の一つになっているかもしれません。保険適用の開始体外受精の保険適用が開始されたことで、不妊治療のハードルが下がり体外受精で産まれた子供が増えたと考えられます。不妊治療数が急に増えた2022年は、保険適用が開始された年でもあります。これまで体外受精は保険適用外で、費用面の負担から治療をためらう方も少なくありませんでした。ただ、2022年に体外受精の治療数が急増したことから、保険適用の開始が多くの方にとって治療を受ける後押しになったのではないかと考えられています。まとめ本記事では、体外受精で産まれた子供の現状についてお伝えしました。まとめると、以下の通りです。2022年の体外受精で産まれた子供は過去最多の7万7206人10人に1人が体外受精で産まれている体外受精を受ける方が増えているため、体外受精で産まれた子供の数も割合も年々増えている増える理由としては、晩婚化、仕事との両立、保険適用の開始が考えられている体外受精を含めた不妊治療を検討されている方にとって、本記事が少しでも参考になればうれしいです。参考:1)2022年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績.日本産科婦人科学会2)不妊治療の実態に関する調査研究 最終報告書.厚生労働省3)令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況.厚生労働省