「日本と海外の不妊治療にはどんな違いがあるの?」と気になる方もいるかもしれません。日本で受けられる不妊治療に制限があるため、中にはより多くの選択肢を求めて海外での治療を検討する方もいるでしょう。最適な方法を選ぶためには、日本だけでなく海外の情報を知っておくことで可能性が広がることもあります。本記事では、日本と海外の不妊治療の違いについて解説します。海外の不妊治療の状況が気になる方は、ぜひ参考にしてくださいね。日本と海外の不妊治療の違いは?日本と海外では、以下のような違いがあります。受けられる治療の範囲(卵子提供・代理母出産など)治療を受ける年齢層や出生率保険適用や費用それぞれ詳しく見ていきましょう。受けられる治療内容日本では第三者から提供された精子や卵子を用いた生殖医療は制限があり、希望をしていても受けるのが難しいケースがあります。その理由としては、法律の未整備や倫理的な問題などがあります。一方、海外の方が治療を受けやすいケースもあり、以下のような治療を受けたい場合海外へ渡航する方が増えています。卵子提供日本では、卵子提供を受けられる条件が限られています。例えば、早発卵巣不全(若いうちに卵巣機能が低下する疾患)や手術で卵巣を摘出した方など、加齢以外の理由で妊娠が難しい場合に限られます。さらに、対象となるのは戸籍上の夫婦のみです。なお、実際に治療を受けられているのは、希望する方の約10%にとどまり、広く普及しているとは言えません。とくに、妊娠しづらい原因が加齢による卵巣機能の低下の場合、日本国内で卵子提供を受けることは現実的に難しい現状です。代理母出産代理母出産とは、夫の精子と妻の卵子を体外受精させ、第三者(代理母)の子宮に移植し、妊娠、出産してもらう方法です。ただ、代理母出産も法整備が整っておらず、妊娠をする母体にリスクがあるなど医学的な問題や倫理的な観点から国内では受けるのが難しい状況です。そのため、代理母出産が認められている海外で治療を受けるケースがほとんどです。受ける年齢日本は不妊治療の実施件数が世界最多ですが、40歳以上で治療を受ける人の割合も最も高い違いがあります。治療を受ける年齢の割合40歳以上の割合 → 日本 43%(世界平均 24%)35歳未満の割合 → 日本 21.2%(世界平均 40.2%)日本の体外受精による出生率は世界平均より低いというデータがありますが、これは不妊治療を受ける年齢の高さが影響していると考えられています。出生率体外受精には新鮮胚移植と凍結胚移植の2種類がありますが、日本では凍結胚移植が主流です。移植の違いによっても出生率が変わってきます。〜日本の出生率の特徴〜新鮮胚移植の成績は低い(高年齢の患者が多いため)凍結胚移植の成績は世界平均を上回る40歳未満の凍結胚移植の成績は世界第2位このことから、日本の不妊治療の技術が低いわけではなく、高年齢での治療が多いために全体の治療成績が低く見えることがわかります。費用と保険適用日本では2022年から不妊治療の保険適用が始まり、体外受精まで公的医療保険の対象となりました。ただし、年齢や治療回数に制限があります。一方、海外では国によって保険適用の範囲が異なり、治療費も大きく違います。また、海外での卵子提供をする場合でも治療費用の違いもでてきます。各国の不妊治療の特徴それでは、ここからは具体的な各国の不妊治療の特徴について詳しくみていきたいと思います。ぜひ、参考にしてくださいね。日本【特徴】不妊治療の実施件数は世界最多クラス治療成績が低い40歳以上の患者の割合が世界で最も高い卵子提供や代理母出産には制限がある。【費用】2022年から一部保険適用により自己負担が軽減された。1周期あたり約10~20万円が目安※卵子提供の場合、1回の治療費は約100万円※治療方法や採卵数、通院回数、オプションの有無などにより変動。アメリカ【特徴】国民皆保険制度はなく、公的医療保険(メディケア・メディケイド)と民間保険が中心。州ごとに制度が異なり、ニューヨーク州では不妊治療に対する経済的支援がある40歳未満の凍結胚を用いた治療成功率は世界第1位(38.7%)代理母出産や卵子提供など、多様な生殖補助医療が法的に認められている【費用】州によって保険適用の有無が異なる体外受精(IVF):1サイクルあたり約110万〜220万円卵子提供:1回あたり約500万円以上代理母出産:1,000万円以上ヨーロッパ【特徴】スペインでは、多くの国で禁止されている卵子提供が認められている。日本と同様に少子化が深刻スウェーデンでは、生殖補助医療の実施件数が欧州の中でも活発。【費用】フランス、イギリス、スペイン、スウェーデンでは自己負担100%。台湾【特徴】2007年に「人工生殖法」が制定され、国の管理下で卵子提供が認められるようになる日本語が通じる病院があり、距離の近さや費用の安さから、卵子提供を希望する日本人の渡航治療が近年増えている。自分にあった不妊治療を選択しよう海外での不妊治療を検討されている方の多くは、国内での治療では妊娠が難しいと感じている方が多いかもしれません。また、日本では法的な制限や費用面の負担があり、不安を感じることもあるかと思います。そんなときは、一人で悩まずに、専門家や同じ経験をした方に相談してみましょう。海外での不妊治療も選択肢の一つとして考えながら、これからの治療について本記事が参考になれば幸いです。参考:1.厚生労働省.議題2に関する参考資料2.メディカルレビュー社.データから考える 不妊症・不育症治療3.諸外国における不妊治療に対する経済的支援等 に関する調査研究報告書