妊活を始めたら、まず見直したいのが毎日の食事。なかでも「亜鉛」は、卵子や精子の質を保ち、ホルモンバランスを整えるうえで欠かせない栄養素です。男女ともに大切なミネラルですが、実は不足しやすい栄養素でもあります。この記事では、薬剤師の視点から亜鉛のはたらきや多く含まれる食べ物、注意すべき習慣、簡単にとり入れられる妊活向けレシピまで紹介します。毎日の食事づくりにぜひお役立てください。妊活中の男女に亜鉛はなぜ必要?妊活中はホルモンやストレスの影響を受けやすく、体の内側から整えることが大切です。亜鉛は、男女ともに必要な栄養素のひとつ。どのような働きがあるのか見ていきましょう。亜鉛は必須ミネラルの一つ亜鉛(あえん)は、体にとって欠かせないミネラルのひとつです。体の中でさまざまな酵素の材料として働いており、細胞の生まれ変わり(新陳代謝)や、DNA・たんぱく質をつくる働き、免疫力を保つためにも大切な栄養素です。健康な体を維持するために、毎日の食事からしっかりとりたい成分です。生殖機能の維持亜鉛は「セックスミネラル」とも呼ばれ、男女の生殖機能に深く関係しています。女性では、ホルモンバランスを整え、生理周期や排卵を安定させる働き男性では、精子の生成・運動率、男性ホルモン(テストステロン)の分泌に関与不足すると生理不順や性機能の低下といった、不妊につながるリスクが高まるため、妊活中はとくに意識してとりたい栄養素です。ストレスケアや免疫維持妊活中は、精神的なストレスや体調のゆらぎが起こりやすい時期。亜鉛はストレスへの抵抗力を保ち、免疫機能のバランスを整える働きもあります。心身の健康を保つためにも、意識して摂りたい栄養素です。【男女別】亜鉛の1日の摂取目安量日本人の食事摂取基準(2020年版)では、亜鉛の推奨摂取量は以下の通りです。成人女性(30代):8mg/日成人男性(30代):11mg/日これは、健康な体の機能を保つために、毎日の食事などから意識してとることが望ましい量として示されています。亜鉛は体にためておくことができないため、不足しないように、日々の食事でこまめにとることが大切です。また、妊娠中は亜鉛の必要量が増えることがあるため、妊活中から意識して摂る習慣をつけておくと安心です。亜鉛を多く含む食べ物一覧亜鉛は、動物性・植物性どちらの食品にも含まれていますが、とくに多く含まれるのは動物性の食材です。なかでも「牡蠣(かき)」は、少ない量でもしっかり亜鉛がとれる代表的な食材です。毎日の食事にとり入れやすい、亜鉛が豊富な食品をグループごとにまとめました。肉類:牛赤身肉(もも、ヒレ)、レバー(鶏や豚)魚介・海藻類:牡蠣、ホタテ、うなぎ、しじみ、あさり、さば、カタクチイワシ、のり、わかめ、えび、しらす 穀類・卵:精白米(ごはん)、卵大豆製品:納豆、高野豆腐野菜類:切り干し大根、枝豆、たけのこナッツ類:カシューナッツ、アーモンド、落花生(ピーナッツ)亜鉛を効率よく摂るポイント3選亜鉛は、せっかく食事からとっても吸収されにくい栄養素のひとつです。ここでは、毎日の食事の中で亜鉛をムダなくとるためのポイントを3つご紹介します。加熱は手早く、煮汁も活用しよう亜鉛は水に溶けやすく、熱にも弱い性質があります。長時間の加熱やゆでこぼしは避け、炒め物やスープなどで煮汁ごと食べられる調理法がおすすめです。ビタミンA・たんぱく質と一緒にとるビタミンAは、亜鉛の吸収を助けるだけでなく、亜鉛の働きを高める作用があるともいわれています。また、亜鉛はビタミンAの代謝にも関わっており、お互いの作用を補い合う関係にあります。さらに、亜鉛はたんぱく質と一緒に新しい細胞をつくるために必要な栄養素。代謝を活発にし、免疫力を高めることで、風邪予防や体調管理にも役立ちます。加工食品やファーストフードは控えめにレトルト食品やインスタント食品、ファーストフードには、亜鉛の吸収を妨げる添加物が含まれていることがあります。毎日ではなく、控えめに楽しむのがおすすめです。亜鉛がとれる簡単妊活レシピ3選ここでは、妊活中に意識してとりたい「亜鉛」がしっかりとれるレシピを3つご紹介します。日々の食事にとり入れやすく、手軽に作れるものばかりなので、ぜひ参考にしてみてくださいね。旨辛!牛肉と高野豆腐のヘルシータコライス牛肉と高野豆腐のWたんぱくで、亜鉛もとれて栄養バランス◎!ピリ辛味で満足感たっぷりのヘルシータコライスです♪【材料】(2人分)・高野豆腐(乾燥)…2枚・牛ひき肉…150g・ゆで卵…2個・玉ねぎ…1/4個(みじん切り)・レタス…2枚・ミニトマト…6個A:ケチャップ…大さじ3A:ウスターソース…大さじ2A:カレー粉…小さじ1・サラダ油…小さじ1・ごはん…2膳【作り方】1. 高野豆腐は水でもどしたら、水気をしぼり粗めに刻む。玉ねぎはみじん切りにし 600w3分で加熱する。2.レタスは千切り、トマトは4等分にする。3. フライパンにサラダ油をひき、牛肉に火が通ったら、玉ねぎ、高野豆腐を加えて炒め合わ せ、Aをいれて少し煮詰める。4. 器にごはんを盛り、レタス、トマト、ゆでたまご、3をのせる。彩り野菜と牛肉の甘辛炒め牛肉の亜鉛と、にんじんのビタミンAがとれる妊活中にうれしい一品。甘辛味でごはんがすすみ、葉野菜で包めばさっぱり食べられます。【材料】(2人分)・牛こま切れ肉…150g・にんじん…1/2本(細切り)・ピーマン…2個(細切り)・ごま油…小さじ1A:醤油…大さじ1A:酒…大さじ1A:砂糖…小さじ2A:豆板醤…小さじ1/2(お好みで)【作り方】1.牛肉は食べやすい大きさに切る。にんじんとピーマンは細切りにする。2.フライパンにごま油を熱し、にんじんを炒める。火が通ってきたらピーマンを加えて炒める。3.野菜を端に寄せ、牛肉を加えて炒めてAを加えて味を馴染ませる。 ごちそう♪牡蠣のオイル漬け亜鉛が豊富な牡蠣を、オイスターソースで香ばしく炒めてオイルに漬け込みました。小松菜やほうれん草などビタミンAがとれる食材と合わせて、パスタやサラダにアレンジすれば、妊活中にうれしい栄養バランスに◎保存容器はあらかじめ清潔にして、しっかり殺菌しておきましょう。【材料】・牡蠣(加熱用)…200g・にんにく…1片(スライス)・鷹の爪…1本・ローリエ…1枚(あれば)・オリーブオイル…150〜200ml・酒…大さじ2・オイスターソース…小さじ1〜2・オリーブオイル…150〜200ml【作り方】1.牡蠣は塩水でふり洗いし、水でしっかりすすいだらキッチンペーパーで水気をふき取る。2.フライパンに牡蠣と酒を入れて中火にかけ、しっかり水分を飛ばす。3.オイスターソースを加えて全体になじませ、火を止める。4.滅菌した保存容器に、にんにく・鷹の爪・ローリエと一緒に牡蠣を入れる。5.オリーブオイルをひたひたになるまで注ぎ、粗熱が取れたら冷蔵庫へ。保存目安は約1週間。男女で取り組む妊活に今こそ亜鉛をとり入れよう妊活は、女性だけでなく男性の体づくりも大切です。亜鉛はホルモン分泌や生殖機能のサポート、免疫力やストレスケアにも関わる重要な栄養素。食事を見直し、夫婦で一緒に亜鉛を意識した食生活を始めることが、妊娠しやすい体づくりの第一歩になります。ぜひ、亜鉛レシピにもチャレンジしてみてくださいね。参考)「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 厚生労働省最新改訂版 知っておきたい栄養学.白鳥早奈英(監修)