「妊活中におすすめの漢方薬を詳しく知りたい」「加味逍遙散(かみしょうようさん)は妊活によいの?」とお悩みではありませんか?加味逍遙散は、更年期のイライラを和らげることでよく知られていますが、妊活でも使われる漢方薬の一つです。ただ、漢方薬は馴染みがなく、加味逍遙散がそもそもどんな薬か、妊活に対してどのような効果があるのか、また自分に合うのか気になる方も多いでしょう。この記事では、加味逍遙散の妊活への効果やどんな人に向いているかを薬剤師が詳しく解説します。さらに加味逍遙散を服用中の方におすすめな食べ物や養生法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。加味逍遙散が妊活に使われるのはなんで?加味逍遙散は、精神症状や血流を改善し、ホルモンバランスを整えることで、妊娠しやすい体を作る漢方薬です。漢方医学では、ストレスや血流の悪さが体全体のバランスを崩し、不妊症の原因になると考えられています。特に体外受精中の方は、強いストレスにより抑うつ、不安、神経症になるリスクが高い傾向です。血流が悪くなると、子宮や卵巣などの生殖器に十分な栄養が届かず、機能が低下する可能性もあります。また、ストレスは妊活の大敵です。卵胞(卵子を包む袋)は脳から分泌されるホルモンによって成長します。ストレスが強いとホルモンバランスが乱れ、卵胞がうまく成長せず、生理不順や無排卵などの不妊原因になることがあります。加味逍遙散を含む不妊症の漢方薬の多くは生理不順に効果があり、不妊症の治療にも応用されています。【月経不順のある不妊症に使われる漢方薬】当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)こ桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)温経湯(うんけいとう)桃核承気湯(とうかくじょうきとう)柴苓湯(さいれいとう)実際に、病院での不妊治療に加味逍遙散を併用した人は、漢方を服用していない人よりも妊娠率が高かったという報告もあります。加味逍遙散は、特に強いストレスや血流の悪さが原因で不妊に悩む方に適した漢方薬です。次に、加味逍遙散の成分や作用について、さらに詳しく説明します。そもそも加味逍遙散はどんな漢方薬?漢方薬を飲んだことがない方や、加味逍遙散について全く知らない方も多いかもしれません。私たちが普段服用する西洋薬は、一般的に化学的に合成された一つの主成分を含むものです。一方、漢方薬は、さまざまな効能を持つ自然由来の素材(植物や動物など)から作られた生薬を2種類以上組み合わせた医薬品です。漢方薬は多くの成分を含んでいるため、一つの処方でさまざまな病状にアプローチしてくれます。ここでは、加味逍遙散にはどんな生薬が含まれていて、どんな漢方薬なのか解説します。加味逍遙散は気や血の巡りを良くするストレス女性の強い見方!加味逍遙散は、気や血の巡りを良くし、主にイライラや不安などの精神症状を和らげる婦人科3大漢方薬の一つです。「気」や「血」という言葉は、漢方理論でよく使われる概念です。漢方医学では、体は「気・血・水」で構成されていると考えます。気…体を動かす生命エネルギー血…体に栄養を与えた、精神を安定させる血液のようなもの水…血液以外の体液「気・血・水」が過不足なく巡る状態が健康で、そのバランスが崩れると心身に不調があらわれます。その場合、「気・血・水」のバランスを整える漢方薬が使われます。例えば、気や血の巡りが悪いとイライラや不安といった精神的な不調が起こりやすくなり、加味逍遙散はこのような状態に適しています。 また、名前にある「逍遙(しょうよう)」は「いったりきたりする、ぶらつく」という意味です。これは、加味逍遙散が、不安、不眠、上半身の熱感、怒りっぽくなるなど、次々と訴える症状が変わる人に使われてきたことに由来します。加味逍遙散は、現代でも特に更年期の不定愁訴(原因がはっきりしない体の不調)によく使われる、ストレス女性の心強い味方です。10種類生薬を組み合わせた漢方薬加味逍遙散は以下の10種類の生薬から構成され、血流を改善したり、気分を落ち着かせる生薬が中心に配合されています。当帰( トウキ)芍薬(シャクヤク)柴胡(サイコ)牡丹皮(ボタンピ)山梔子(サンシシ)薄荷(ハッカ)茯苓(ブクリョウ)白朮(ビャクジュツ)生姜(ショウキョウ)甘草(カンゾウ)当帰や芍薬は主に血を補い、血流を改善して生理を整える働きがあります。さらに牡丹皮は血流を良くするのに優れた生薬です。また、柴胡、山梔子、薄荷は上半身のこもった熱を冷まし、鎮静作用に働きます。10種類の生薬が組み合わさることで、加味逍遙散の効果が発揮されます。加味逍遙散の効果は?更年期障害やPMSにも使われます加味逍遙散が効果のある症状や病気は以下の通りです。冷え症生理不順生理に伴う不快な症状(生理痛など)更年期障害血の道症「血の道症」とは、女性ホルモンの揺らぎ(生理、妊娠、出産、産後、更年期など)に伴って現れる不安やイライラ、身体の不調を指す漢方医学の言葉です。また、加味逍遙散はPMSにもよく使用されます。PMSとは、生理が始まる3〜10日前におこる、身体的および精神的な症状で、女性ホルモンのゆらぎが関係しているとされています。とくに精神的な症状が強い場合はPMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれます。実際にPMDDと診断された人が、加味逍遙散を6周期服用したところ、約半数の人で症状がよくなったという報告もされています。加味逍遙散は、主にホルモンバランスの乱れによる女性の心身の不調を改善します。効果が出るまでにはどのくらい時間がかかる?効果が出るまでは個人差がありますが、加味逍遙散を服用し始めてから2〜4週間ほどは様子をみましょう。例えば、イライラが減ったり、よく眠れるようになったり、体が冷えにくくなる、などの変化があるかもしれません。生理周期や基礎体温を記録すると、体の変化をより把握できるため、無理のない程度につけるのもおすすめです。また、妊活における漢方薬の服用は体質改善が目的なことが多く、さらに数ヶ月と長期的に服用が推奨されることがあります。病院や漢方薬局で処方を受けた場合は、体調の変化を確認してもらいつつ、指示通りに服用しましょう。加味逍遙散が向いている4つの体質加味逍遙散を効果的に服用するためには、体質や症状に合ったものを選ぶことが大切です。ここでは、加味逍遙散が向いている4つの体質を紹介するので、ぜひチェックしてみてください。①虚弱体質の女性加味逍遙散は、以下のような虚弱体質の女性に向いています。疲れやすい、風邪をひきやすい痩せ型筋肉が少ない冷えやすい声が小さい東洋医学では体力や病気への抵抗力から診断する「虚・実(きょ・じつ)」の考え方があります。加味逍遙散は、体力や抵抗力が弱めな「虚」のタイプに向いている漢方薬です。②神経症加味逍遙散は、あれこれ気になったり、イライラやヒステリーなど、神経症的な症状がある人に適しています。「気」の働きが不安定で、エネルギーの循環がうまくいかない「気滞(きたい)」の体質に向いています。加味逍遙散は、気を巡らせ、気持ちを落ち着かせてくれる生薬を多く含みます。③肩がこりやすい漢方医学では、肩こりの原因の一つに、血が滞ること(瘀血)を考えます。加味逍遙散は血の巡りを改善する生薬を多く含み、肩がこりやすい体質の方に適しています。④やや便秘気味加味逍遙散は、やや便秘傾向がある方にも向いています。便秘の原因はさまざまですが、ストレスで腸の動きが鈍くなるタイプの便秘もあります。加味逍遙散が合う人におすすめな食事や養生法は?加味逍遙散をより効果的に服用するためには、気や血を巡らす食事や養生法を心掛けましょう。養生法とは食事、運動、休息などで心身を整える東洋医学の健康法です。「養生7割、漢方3割」という言葉があるほど、普段の食事や生活習慣を整えることはとても大切です。養生法はどんなものでもよい訳ではなく、体質に合う生活習慣や食事を心掛けることで、より心身の不調の予防や改善につながります。加味逍遙散は、血や気の巡りが悪い方に適した漢方薬であるため、養生法もそれに合わせたものを取り組むとより効果的です。例えば、気を巡らせるためには香りのある食材がよいとされています。加味逍遙散にも含まれる「薄荷(ミント)」はその代表例で、スッとした香りが気分をリフレッシュさせます。他にも、以下の食事や養生法がおすすめです。~おすすめ食材~①気を巡らす食材(香りのある食材)レモンやミカン、グレープフルーツなどの柑橘類紫蘇、セロリなどの香味野菜②血を巡らす食材たまねぎやにんにくなど辛みのある食材いわし、さんま、さばなどの青魚~生活養生~①気を巡らす養生法趣味に没頭する、友人とおしゃべりするなど、楽しい時間を持つアロマや入浴剤など好みの香りを楽しむ適度に運動する②血を巡らす養生法仕事の合間に肩を回すなど、こまめに体を動かす湯船にゆっくりつかる続けることが大切なため、無理のない程度にできることから少しずつ、はじめて行きましょう。加味逍遙散の副作用や注意点は?「加味逍遙散は太る?副作用はある?」「長期間、飲んでいいの?」など、加味逍遙散の副作用や注意点が気になる方もいるでしょう。最後に加味逍遙散の副作用について解説します。主な副作用と対処法加味逍遙散の副作用には、吐き気・嘔吐、胃の不快感、食欲がない、下痢などの消化器症状や発疹、かゆみなどの皮膚症状があります。これらの症状がでた場合は副作用の可能性があるため、すぐに中止して、医師に相談しましょう。さらに稀にですが、以下の症状が重くなりやすい副作用が起こることもあります。偽アルドステロン症、 ミオパチー:手足のだるさやしびれ、筋肉のつっぱりやこわばり、脱力感、筋肉痛が徐々に強くなる肝機能障害 :発熱、かゆみ、発疹、皮膚や白目の黄ばみ、茶色の尿、全身のだるさ、食欲不振などこのような症状に気づいた場合は、すぐに医療機関へ受診しましょう。長期間服用しても大丈夫?長期間の服用により、まれに腹痛や下痢、お腹の張りが繰り返し現れる腸間膜静脈硬化症という副作用が出ることがあります。通常は、薬の服用を中止することで改善しますが、症状に応じた適切な処置が必要です。特に、吐き気や嘔吐などの腸閉塞に似た症状が現れた場合は、すぐに服用を中止しましょう。腸管の切除などの適切な治療が行われることもあります。漢方薬は体質改善を目的として長期間服用することが多いです。加味逍遙散に限らず、漢方薬を服用中は定期的に健康診断をうけ、血液検査などに異常はないか確認することが大切です。加味逍遙散は太る?加味逍遙散そのもので太ることは考えにくいでしょう。ただ、ストレスで食欲が落ちていた方が加味逍遙散を服用することで食欲が戻り体重が増えるなど、間接的に影響する可能性もあります。まとめ本記事では妊活で使われる加味逍遙散について解説しました。加味逍遙散は、精神的な症状や血流を改善し、ホルモンバランスを整えることで、妊娠しやすい体を作る漢方薬です。10種類の生薬から構成され、冷え症や生理不順、更年期障害など、主に女性ホルモンの揺らぎによって現れる症状を改善します。また、加味逍遙散は、以下の4つの体質の方に特に向いています。①虚弱体質の女性②神経症③肩がこりやすい人④やや便秘気味加味逍遙散の効果をさらに高めるためには、気や血を巡らせる食事や養生法に取り組むこともおすすめです。妊活中で漢方薬の服用を検討している方にとって、本記事が参考になれば幸いです。参考:1)ツムラ加味逍遙散エキス顆粒(医療用)インタビューフォーム.株式会社ツムラ2)横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター編.漢方重要処方60 改訂版.20193)一般不妊治療に加味逍遙散や当帰芍薬散を併用する意義 中山 毅