不妊治療の技術は進歩し、今ではカップルに合わせた様々な不妊治療の方法を行っています。不妊治療について調べる中で、「タイミング法」という言葉をよく目にすると思います。今回は、不妊治療のファーストステップとなるタイミング法について効果や方法を詳しく解説していきます。タイミング法ってなに?タイミング法とは、最も妊娠しやすい時期である排卵日を予測し、そのタイミングで性交渉をする方法です。タイミング法が効果的な理由タイミング法が効果的な理由は、1ヶ月の中でも妊娠できる時期はごくわずかだからです。卵子の受精可能時間はたったの24時間です。この受精可能時間内に、精子が受精場所である卵管内に到達していなければ受精はできません。また、精子の受精可能時間は約72時間なのでタイミングを考えて性交渉をすることが大切となります。精子が卵管部に到着した状態で、卵子の排卵を待つ方が受精の成功率は高いと言われているので、排卵日の1〜2日前に性交渉をするのが最も妊娠しやすいと言われています。タイミング法の対象となる方タイミング法は不妊治療のファーストステップといわれていますが、全ての人にとって効果的であるというわけではありません。カップルの背景、体質や合併症に応じて対象となるか判断されます。◉対象となる女性①排卵がある卵巣で卵胞が育ち、成熟した卵子を排卵できることが条件となります。卵胞の発育が難しい方や排卵が難しい方は、軽度であればホルモン剤などを使って排卵を促すことができます。しかし、排卵自体が難しい場合には、卵巣から直接成熟した卵子を取る(採卵)という不妊治療のステップアップが必要になることもあります。②自然妊娠が可能な状態である排卵後の卵子は卵管膨大部という卵管の少し膨らんだ場所で精子と受精した後、卵管を通って子宮内に到達し、子宮内膜に着床して妊娠が成立します。そのため、輸送経路である卵管に閉塞がないことが条件です。また、事前に子宮内の形状や婦人科疾患の合併がないか調べておくことも大切です。◉対象となる男性①勃起が十分にできる勃起不全(ED)の場合には、女性の膣内で射精することが難しいです。他の疾患のない男性のEDの原因は、ストレスや疲労、プレッシャーなどがあります。サプリメントやED治療薬もあるので、不妊治療をしている婦人科の他、泌尿器科やメンズクリニックでも相談してみましょう。②精液検査に異常がない精液検査では精液の量や精子の濃度、運動率、精子の形態などを調べます。精子の状態はその日の体調や疲労、禁欲状態によっても変化します。軽度な異常であれば、サプリメントや薬、生活習慣の改善などで精子の状態を回復させることもできます。タイミングはどうやって把握するの?妊活していく中で、ご自身の排卵周期を知ることは大切です。排卵日が近いかどうかをご自身で判断する方法もあります。タイミング法の要である排卵日を把握する方法について解説していきます。基礎体温の記録から予測妊活中にご自身でもできる方法の一つです。基礎体温とは、人間が生命維持に必要な最小限のエネルギーしか消費していない状態、つまり寝ている状態の体温のことをいいます。寝ている状態の体温を自分で測定することはできないので、一般的に基礎体温は朝目覚めて活動する前に測定します。正常な排卵が行われている女性の基礎体温は、排卵前後で「低温期」と「高温期」の2パターンに分かれています。①低温期生理が始まると体温が下がり、2週間ほど低温期が続きます。つまり、排卵前の時期は低温期になります。②高温期排卵すると体温は上昇し、次の生理が来るまで2週間ほど高温期が続きます。つまり、排卵後は高温期になります。体温が上がらず、低温期が続いている場合には排卵が起きていない可能性があります。3ヶ月ほど測定することで、ご自身のおおよその排卵周期を知ることができます。頚管粘液をチェック妊活中にご自身でもできる方法の一つです。頸管粘液とは、いわゆる「おりもの」のことで、卵巣から分泌される女性ホルモンの変化によって、頚管粘液の粘り気や量も変化します。頚管粘液は膣から細菌が体内に入ってくるのを防ぐ役割がありますが、排卵期になると精子が子宮へと到達しやすいようにもサポートしてくれます。排卵日近くには頚管粘液の量が増え、透明になり、糸を引くように伸びるようになります。排卵日予測検査薬を使用する排卵日予測検査薬は、尿をかけるだけで排卵日を予測することができる検査薬です。ドラッグストアなどでも購入できるので、ご自身でもチェックすることができます。排卵日予測検査薬は、排卵前に急上昇する黄体形成ホルモン(LH)の変化をとらえ排卵日を約1日前に予測することができます。超音波検査で卵胞の大きさをチェック超音波検査(エコー)は病院で行う検査です。卵巣の中では排卵に向けて卵胞が成熟していきます。卵胞径が12mm程度になると、その後1日あたり約2mmのペースで成長していきます。そして、卵胞径が18~22mm程度になると排卵します。超音波検査はおおよその排卵日を予測した上で行い、卵胞の大きさからあと何日で排卵するかを予測していきます。タイミング法の効果を上げるためにできることは?タイミング法を行っているときには、排卵日を予測してタイミングを取ることにだけに目が行きがちです。しかし、タイミング法の効果を上げるためにも妊娠に向けて妊娠しやすい体づくりも大切になります。タイミング法の効果を上げるためにできることについて解説していきます。妊娠しやすい体と心をつくる女性の排卵、妊娠は女性ホルモンによって管理されています。そのため、ホルモンの分泌が安定していないと妊娠しにくくなってしまいます。妊娠しやすい体と心を作るためには、以下のことが大切です。①ストレスをためない②十分な栄養を取る③十分な休息と睡眠を取る④規則正しい生活を送る⑤適度な運動を行い、肥満を防ぐ⑥禁煙をする精子の状態を整える生活をする妊娠は女性だけの問題ではなく、もちろん男性の精子の状態も大きく関わってきます。精子の状態をより良好に保つための生活を送ることが大切です。①十分な栄養と休息を取る②規則正しい生活を送る③生活習慣病を予防する④禁煙をする薬によるコントロール女性では卵胞の成熟が難しい場合や排卵が難しい場合に、薬の投与によってホルモンの変動を促進することもできます。また、男性でも勃起や精子の状態によって薬を使うこともあります。薬を使用するか否かは、何回タイミング法を試したか、ホルモンの状態、合併症の有無など個人差があります。医師の指示のもと、必要があれば実施していきます。タイミング法のメリットとデメリットタイミング法のメリットとデメリットについてまとめていきます。メリット①自然妊娠に近く、心身ともに負担が少ない不妊治療の中では最も医療的な介入が少ない方法です。そのため、自然妊娠のスタイルに近く、大きな痛みも伴わないため心身ともに負担は少ない方法です。②経済的な負担が少ない不妊治療はステップアップしていくと高額になり、経済的にも負担が大きくなります。ファーストステップであるタイミング法は、最も経済的な負担が少ない方法です。デメリット①妊娠率は高くはない自然妊娠に近い方法のため、妊娠率は高いとはいえません。1周期での妊娠率は、妊娠しやすいカップルで20%、不妊症のカップルは5〜8%といわれています。②タイミングに合わせて性交渉をする必要があるタイミング法では排卵日の1〜2日前に性交渉をする必要があります。そのため、仕事やプライベートの都合をつける必要があったり、プレッシャーに感じてしまうこともあります。ステップアップの目安って?ファーストステップであるタイミング法を試してもなかなか妊娠が成立しない場合には、不妊治療のステップアップを検討していきます。ステップアップの目安としては、一般的には6回、つまり排卵はだいたい1ヶ月に1回なので、連続してタイミング法を試していくと6ヶ月ほどです。カップルの年齢や状態によって変動はあるので、早い時期にステップアップを提案されることもあります。ステップアップのタイミングにも個人差はあるので、相談してみましょう。まとめ今回は不妊治療のファーストステップである「タイミング法」について解説しました。タイミング法は自然妊娠に近い方法であり、不妊治療の中では体への負担が少ない方法です。排卵日を予測してタイミングを取ることにだけに目が行きがちですが、男女ともに妊娠しやすい体づくりも大切になります。パートナーとコミュニケーションを取りながら、ご自身のペースも大事にしていきたいですね。【ライタープロフィール】助産師 四辻有希子大学院を卒業後、助産師として地域周産期母子医療センターの産科病棟勤務。不妊治療から妊婦健診、出産、産後まで幅広く周産期の助産ケアに関わっている。〈資格〉・助産師、保健師、看護師・ICLS認定インストラクター・新生児蘇生法「専門」コース修了・J-CIMELSインストラクター